今更ながら「キュレーションの時代」をちゃんと読みました。ソーシャルメディア等を通して無数のキュレーターによる視座が提供され、人々がそこから情報を得られる時代。誰もがある分野ではキュレーターであり、フォロワーであり、マスメディアや従来の広告のような画一的ではない情報流通が当たり前になる時代。そういう時代がここで述べられているキュレーションの時代だと思います。
言葉の定義ですが、いったん以下のように使います。
- キュレーション → ある視座、ある考え方に基づいて情報を整理すること。整理する人のことを「キュレーター」
- ビオトープ → 生態系。ここでは特に、ある視座、考え方の元に集まっている人たちの集まりのこと。
とは言えキュレーションと言う行為は昔からある
もともと「キュレーション」と言う言葉が使われてきた博物館などだけではなく、「○○の話なら××さんが詳しいよね」と言うのはどこにでもあって、事実上のキュレーターと言うのは無数にいたことになります。
また「ビオトープ」についても、もちろんソーシャルメディア以前から、あるものが好きな人たちの集まりって言うのは至る所にあったわけで。それはリアルなご近所さんの集まりだったり学校のクラスだったり、会社の喫煙所だったり、週末のバレーボールサークルだったりしたと思うのですね。あるいはネットの中なら掲示板だったり、チャットだったり、ホームページ(久しぶりにこの言葉を使った)だったり。
じゃあ、なぜいまキュレーションとか言われるようになってきたのか
マスメディアによる画一的な支配(支配って言葉を使うのは、なんか陰謀論めいてますが。)が出来ない世の中では、人の行動や考え方はこれまでよりずっと多様になるので、例えばマーケティングを例に取ってもビオトープ(そういうのが好きそうな人たちの集まり)を見つけるのが大事だし、それが大変ですねと、1章にも書かれています。
そういう「○○が好きで集まってる人たち」と言うのが可視化され誰でもそこにリーチ出来るような環境が整ってきたからこそ、最近になって論じられるようになってきたんじゃないでしょうか。可視化と言っているのは、例えばソーシャルメディア上でどういうコミュニティに属してるとか、誰をフォローしてるとかそういう情報で人をある程度セグメントで来て「ビオトープ」は割と見えるようになってきたよね、と言うことです。
キュレーションの未来
冒頭に書いたような、キュレーションの時代が来ると本書では書かれていました。1年半前(2010年10月)の本なのにいま読んでも全然違和感が無い辺り、本のテーマはほんと的確だったのだなと思います。
本の予想通り、ソーシャルメディア人口は増加の一途を辿り、キュレーションによる情報流通は以前より力を増しています。じゃあ、5年後10年後はどうなっているんでしょうか。
数年前、Web2.0と言う言葉がバズワードになり、これからはCGMの時代や!みたいになってブログやmixiが騒がれた時期がありました。考えてみるとブログやmixi(たとえばmixi日記)でも同等のキュレーション機能は仕組みとして持っていたし、果たそうと思えば果たせたはずなのですよね。でもそれが今ほど情報源として確立(今も世の中一般の人に広まっているかと言えば、まだまだだと思うけど)しなかったのは、そういうキュレーション的な利用がキャズムを超えていなかったからだとは思う。
国によるキュレーション、マスメディアによるキュレーション、個人によるキュレーション。情報を整理する(ある視座に基づいてまとめる)主体の規模はどんどん小さくなっていき、個人と言うのはもはやこれ以上無い最小の単位になっているように思える。が、今後起きるイノベーションで、もしかすると個人は更に分解されるかもしれない。
例えば僕個人を分解すると、
みたいなものがあるはずで。何かしらの仕組みで個人はそういう形で分解され、その「個人を構成するモジュール」として更にビオトープを形成するような仕組みが出来ていくのかも。
そしたら「個人」の定義は今とは代わる。「個人の中の○○と言う側面」と言うものだけが取り出され他人と共有され、他の人にとってはその一部の側面だけが「個人」として認識され繋がっていく。今の時代の「個人」の定義は「個人を構成する様々な側面の集合」になり、人の最小単位は自分な内部の更に細かな側面になっていく。そしてやがて自分と他人は同じ視座の元に考えや意識を共有していき、自分と他人の脳はネットの世界を介してつながっていく…とか言うとどんどんSFチックになっていきますが、そういう方向に行くのは結構あり得そうな気がしてます。なんかそういうの楽しい!近未来や!! まる。
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- twitterはこちら。よかったらフォローしてください! http://twitter.com/mantol
グローバルなプラットフォームの上で、コンテンツやキュレーター、それに影響を受けるフォロワーなどが無数の小規模モジュールとなって存在する。その関係はつねに組み替えられ、新鮮な情報が外部からもたらされていく。 そういう生態系の誕生。 - 著者

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