ドラクエ10の中の経済格差と、経済政策としての10月大型アップデート(お金の稼ぎ方 その3)

1.3バージョンアップとwiiU版についてはこちら!


ドラクエ経済のお話、第3弾です。前回と前々回は「ドラクエの世界でも経済が回っている」「しかも最近は不景気になってきた」と言う内容を書きました。次回は「どらくえでぼくがかんがえた経済政策」みたいな内容で書こうかなーと思ってたらちょうど大型アップデートが来ていたので、それに合わせて書きます。

アップデートって?

普通のゲームしかされない方にはピンと来ないかも知れませんが、オンラインゲームやソーシャルゲームは、時間の経過と共に世界がどんどん拡張されて行くのが一般的です。昔のゲームで例えると「スーパーマリオで8−4までしか無かったところに9−1が追加されました!」とか「ドラクエで最後のボスを倒した後に、もっと強いボスが追加されました!」とかそういう感じです。こういうのがあることで、ずっとゲームを続けていきたくなるわけですね。

ドラクエ世界の不況っぷりをグラフで見る

第1回、第2回で書いたようにドラクエ世界の民は不況にあえいでいます。どのくらい不況かと言うのを、最近公式で「ドラクエ国勢調査」なるものがされたのでそのデータを見てみましょう。以下がユーザごとの所持金の分布です。


(C)SQUARE ENIX  ※画像はドラクエの公式から借りました。

また、これに併せてユーザの平均所持金額は 29,781G であると発表されています。この数字はどう考えればよいのでしょうか。

二極化、格差の拡大が進む世界

上のグラフは2つの重要な問題を示しています。

  • 貧富の差が非常に激しく二極化している
  • 全体的な所得がとても低くデフレが進んでいる

おいおい、これはどこのジャパンだよ…っていう。やはり30万人がプレイするドラクエは、日本社会を反映してしまう宿命なのかも知れません。

二極化について

お金を持っている人と持ってない人の差が著しいです。いわゆる廃人系プレイヤーや、うまくスタートダッシュをかけられたユーザはお金を持っている傾向にあるでしょう。お盆辺りはまだ職人で稼げたのでその頃から仕事してた人は100万ゴールドくらい持ってるかも。逆に最初からお金儲けにそんなに興味なかった人や、後発(特に最近プレイし始めたとか)の人はなかなかお金貯まらないと思うので、所持金1万ゴールド以下とかになっているのかもしれません。

キャラクター数の推測

もう少し具体的に計算してみましょう。知りたいのは「上位プレイヤーがどれだけ富を独占しているのか(してないのか)」です。公表されている数字だけだと所持ゴールド帯分布ごとの平均所持金は公表されていないので、所持金の格差が分かりません。ただ、いくつかの数字を組み合わせると見えそうです。

上記の通り国勢調査によると平均所持ゴールドは29,781Gです。実際のアクティブプレイヤーキャラクター人口がどの程度かは公表されていないので、以下のソースから考えます。

  • 国勢調査時点、サポート仲間登録数が約31万人
  • 1,2週間前に出た日経だかどこかの記事には 約30万人が課金 と書かれていた
  • 発売後約50日の売上総本数が約60万本(ファミ通調べ)

と言う辺りなので、アクティブなプレイヤーキャラクター数は大体 31万人 と考えておきます。全員がサポート仲間登録していないと思うし休眠中のキャラもいると思うのでズレるとは思いますが、30万でも60万でも今回の結論は変わりません。

それを元に流通ゴールド数を推測

これらを元に、次のように計算します。

  • この時点での総流通Gは 29,781G × 31万人 = 約92億G
  • 各ゴールド所持帯ごとの一人当たり平均ゴールドは その中央値と仮定する(例:1万〜5万G帯のユーザ平均は25,000G)
    • 10万G以上帯だけは不明のため、後で計算する
  • 31万G×各分布のユーザ割合がは計算できるので、以下が求まる(流通総ゴールド=そのユーザ帯全員が持っているゴールドの合計)
    • 1万G未満ユーザ帯 流通総ゴールド:約5億G
    • 1万〜5万Gユーザ帯 流通総ゴールド:約6.5億G
    • 5万〜10万Gユーザ帯 流通総ゴールド:約1.5億G
  • これらの合計を約92億Gから引くと、10万G以上ユーザ帯の流通総ゴールドが求まる
    • 92億G - 5億G - 6.5億G - 1.5億G = 79億G

これを表にすると以下です。

推測した分布はこんな感じ
ゴールド所持帯 ユーザ分布% 実人数 総ゴールド 総ゴールドに占める割合 一人当たり平均ゴールド
1万G未満 57% 176700 503,595,000 5% 5,000
1万〜5万G 29% 89900 651,775,000 7% 25,000
5万〜10万G 8% 24800 148,800,000 2% 75,000
10万G以上 6% 18600 7,927,940,000 86% 426,233
合計 100% 310000 9,232,110,000 100%

何が言いたいか。ドラクエの世界の富の86%は、たった6%の人間によって独占されている。と言うことです。なんということでしょうか。。(ちなみにキャラクター数を60万人と仮定すると73%になります。)もし同じような分布が10万G以上ユーザ帯の中でも当てはまるなら、富の約50%は1%のユーザが持っている、とかも起きているかもしれません。(ここでは資産化しているお金は考慮してません。例えば装備とか、宝石貯めこんでる人は無視してます。)

現実世界でもそうですが、資本主義だと富はどうしても集中します。「お金を持ってるとより儲けられる」「お金を持ってないと儲けられない」と言う構造にどうしてもなるからです。例えばいまお金を持っている人は、素材の値段が高いけど利幅が大きいアイテムの作成や練金にトライしたり、お金がかかる「まほうのせいすい」を使いまくるような一攫千金のレシピ狩りに行ったり出来ます(今はそんな儲かんないけどね)。でも持ってないとそういうことが出来ないのでコツコツとピンクモーモンを倒すしか無いわけです。以下、参考。

デフレ進行について

前回前々回の記事にも書いた通り、物価がどんどん安くなってみんなの所持金が下がっていくデフレ傾向が進んでいます。

ちなみに1万ゴールドと言うのがどの程度の価値かと言うと、中盤(LV35)になったら装備出来るスタンダードに強くて誰でも装備出来る「まほうのよろい(上下)」と言う防具があるのですが、これを買うと大体上下セットで1万ゴールドです。仮に今のユーザの平均レベルはこのくらいだとすると、みんなこの装備を買っただけでお金がゼロになっちゃうわけです。そうすると武器も帽子も、小手も靴もアイテムも買えないわけです。そりゃみんな「お金無い」って言って嘆くわけですね。ちなみに上に書いた、MPを回復する「まほうのせいすい」は1つ500Gするので、20個買ったらおしまいです。悲しい…

で、これの何が問題なのか

前回の記事で「別にデフレでも、物価が下がるだけだから大して問題無いよ」とか書いたんですがそれは誤りでした。ゲーム内の格差やデフレは深刻な問題です。なぜなら大多数の人間にとって格差やデフレがあるのはゲームとして面白くないから。この不況の世の中、なぜゲームの中ですら不景気感を味わわねばならんのでしょう。物の値段も一緒に下がってるからいいよね、買い物には困らないよね、と言う問題ではないのです。職人作業があまり機能していないことも含めて、楽しむためにやってるゲームがこれではつまらないのです。この状態が続けば少なからずユーザは減るでしょう。なので経済対策はドラクエの中でどうしても必要になってくるはずです。

ドラクエ世界に必要な経済政策

では、対策として何が必要なのか。僕は経済の専門家ではないですが、問題を上に書いた「二極化」と「デフレ」だとすると対策は以下のようなものがあるのではないでしょうか。

  • 二極化 → 上位のユーザが持っている金を一気に減らす or 下位のユーザが持っている金を一気に増やす
  • デフレ → 全員の所持ゴールドを一気に増やす、需要を喚起する

こういうものが必要と言う観点で、今回の10月の大型アップデートの内容を見てみます。

ドラクエのアップデート内容を経済政策として捉えてみると

アップデートの内容として発表されているものは大きく分けて以下です。

  • 1.ハウジングシステム(ゲーム内で家を買える!)
  • 2.持てる装備品の所持枠を増量(25→50)
  • 3.新職業追加(パラディン、レンジャー)
  • 4.レベル上限解放(50→55)
  • 5.スキルポイントの振り直し、モンスター討伐隊、転生モンスター、その他いろいろ。。

順番に見ていきましょう。

二極化対策

二極化対策は上の中で言うと1のハウジングが該当すると思います。プレイヤーの方は公式サイトをご覧頂ければよいですが、ゲームしてない人のためにざっくり言うとこんな感じ。

  • 家と土地をゲーム内に買えるシステム
  • 値段は初日は50万Gする。でも翌日以降1日に2万Gずつ価格が下がるので、24日後には2万Gで買える
  • 土地は無限に用意されているので2万G出せば誰でもきっと買える(買うために時間はかかるけど)
  • 先に買っても機能的に嬉しいことは何も無い。嬉しいのは好きな番地が選べるだけ。

この50万Gと言う値段設定がほんとに絶妙だと思うのですよね。上に書いたように、上位6%のユーザの平均所持Gは42万Gです。と言うことは最上位層のユーザのうち約半分は初日に買う権利があるわけです。その数は約1万人くらいでしょうか。

好きな番地のためだけに誰が買うんだよ、と思われるかもしれませんが、間違いなく売れるでしょう。なぜならお金の使い道は他にあまりないし、そもそもゲームとはこういうところで競うものだからです。「俺、グレンの1丁目1番地持ってるぜ!」と言う優越感にはそれだけの価値があるのです。1万人が初日に買うとは言いませんが、半分の5000人くらいは初期の1週間以内に買うんじゃないでしょうか。固く見ても2, 3000人くらい?仮に5000人が初日に買ったとすると、

  • 50万G × 5000人 = 25億G

が一気に動きます。そう、これは現在の総流通ゴールドの約27%に当たります。27%のお金が一気にハウジングシステムで消費される(システムに吸収される)、すなわち市場から消える。これによって最上位の6%のユーザ人口は一気に減り、より均質な世界に近づくことでしょう。すばらしい。ただ、こういうことをやったとしても家を10軒20軒買えるくらいお金持ってる人はいるので、そういう意味での格差は残り続けます。ただ上位と下位の差を近付けると言う方針ではとても意味があるのではないでしょうか。

モンスターを倒してお金が入ったり、アイテムを拾って店で売るだけでお金になる以上、世の中のお金は増え続けます。そんな中で定期的にシステムでお金を吸収する仕組みは今後も出て来るでしょう(じゃないと今度はインフレする)。家がある程度の人たちに流通するまではハウジングシステムがその役割を担い、今後家が頭打ちになって来た頃に来るのはきっとカジノでしょうね。僕的には次の春くらいに新パッケージとして(ver.2とか?)ソフトが発売される気がしていて、その時にカジノも来るのかなーとか勝手に思ってます(予想)。

ちなみに発表はされていませんが、下位プレイヤーの底上げをするための施策も何か出るかもしれませんね。例えば低レベルのうちはコンシェルジュのサポートゴールドが増えるとか、職人やバザーで何か優遇されるとか。でもこれをやると流通ゴールド数が一気に増えるので、やらない気はする。(上のハウジングの目的と逆行するので)

デフレ対策

上の一覧で言うと2の装備品枠増量、3の新職業追加、4のレベル上限解放、これらがデフレ対策に該当すると思います。どれも需要喚起に効きそうですね。

2の装備品枠追加。実はこれが一番効く気がします。装備は買わずともレベルは上がるので多くの人がLV50近くになっています。その時にみんながゲーム中で進む道は「メイン職業以外のレベル上げ」です。そのときに本当は別職業の分の装備も買いたい。LV7とか14の装備なら高くないから買える。でも装備枠が足りない(需要はあるがシステム的に制限されている)というのが現状起きていることです。これを解消することで特に中レベルまでの需要はまた拡大するんじゃないでしょうか。50個あればほぼ全職業分の装備は持てると思います。

3の新職業追加。2とも関連しますが、職業が増えることで装備需要は増えます。また今回は新武器種の「ブーメラン」「ハンマー」「弓」も出るのでこの辺の需要も必ずあるでしょう。

4のレベル上限解放。これは上位装備の需要に効きそうですね。今までLV50装備はぶっちゃけあまり必要なかったんですが(LV50以上にレベルを上げられないため装備もいらない。)、LV50からLV55に上げるためにはそれなりに経験値が必要になるはずなのできっと装備需要は上がるはずです。

その上でのお金の稼ぎ方

アップデートは上に書いたように需要が大きく変化するので、お金を稼ぐチャンスは必ず増えるはずです。今まで儲からなかった人も同じスタートラインに立てる可能性があるのでこのタイミングでチャレンジしてみてはどうでしょう。

例えば新武器種類の「ブーメラン」「ハンマー」「弓」のこれらはどうやって作るんでしょうね。木工?武器鍛冶?あるいはその他?作るための条件はあるでしょうが、市場にモノがゼロの状態から始まるので需要は果てしなくあるはずです。参入するなら今しかない!?

そして住宅、ハウジング。これに伴って家具が実装されるともっぱらの噂です。家具と言えば、カミハルムイのNPCも言ってた気がしますが木工で作れるそうですね。家具も市場にはゼロから始まる。これもバザーで取引されるようになる?だとするとチャンスですよね。木工自体のユーザが増えるとしたら、木工関連の道具や素材も上がったり上がらなかったり?

新職業の追加はどう影響するでしょう。彼らが装備できる武器や防具は?これまでの職業のスキルセットと比べると今後人気の出る武器は?それを狙って作るのもいいかもしれないですね。そしてLV上限解放も来るので50武器の需要は上がるでしょう。需要が増えるから値段が上がるわけではないですが、流通量は増えるはず。だとしたらどう攻める?LV50装備の中でも人気が出るものは?とか。

などなど、色々考えるとやれることがいっぱいありそうです。新しい敵も追加されますし、そうなると素材やレアアイテムの価値もまた変わるでしょう。せっかくのチャンスなので色々やってみると、儲かっても儲からなくても楽しいんじゃないでしょうか。ちなみに煽ってみましたが責任は取れませんので、自己責任で頑張ってください。。あしからず。僕もいま上に書いた何かに賭けて投資してます。

まとめると

経済格差は思っていたよりもかなりありそうでした。しかしそれに対する対策としては、かなり有効な手が打たれる気がします。まぁ、そのうちすぐにまた格差が戻ると思うけど…しばらくは持ち直すのではないかなと。需要も新たに増えますし、それによるお金稼ぎのチャンスも来るのではないでしょうか。

健全にみんなが楽しめる社会を作るためにスクエニの皆さんには頑張ってほしいなーと思いますし、今後の展開も楽しみにしています。いちプレイヤーより。まる。

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