津田大介氏、通称つだっちの「動員の革命」を読みました。「動員」と言うとなんか大変なことのようですけども、文字通り「人がどう動くか」の話、いや「人をどう動かすか」の方が適切かも。先々週くらいにこの感想を書いたんだけど、投稿タイミングを逸してしまった。。
ソーシャルメディアの登場によって「人の動かし方」がどう変わって来たのか。オンライン上のサービスであるソーシャルメディアが、ネット上だけではなくオフラインの世界にどういう影響を与えているのかと言う視点は、今後のソーシャルメディアの使われ方を考えていく上でとても大事ですね。
ソーシャルメディアは「共感」の革命を起こしているし、そこには新たなお金の流れが生まれる余地がまだまだあると思います。
ソーシャルメディア革命とは、「動員」の革命なのです
本文P.42より。
それに加えて「共感」の革命でもあるんじゃないだろうか。
人を動かす立場から見るとこれは(今更ながら)とてつもない革命かもしれない。ソーシャルメディアの登場によって、場所(距離)、時間、コストの問題などが一気に解決させて人を巻き込めるような世界になったのは間違いないし、アラブの春のような人々の動きはもはや世界中どこでも起き得るものになっています。
動かすと言うのはデモや政治で人を「動員する」と言う話だけではなくて、マーケティングや広報、人と人とのコミュニケーションなど他の分野でも同じです。例えばネット上で爆発的に話題になったりすることを「バズる」とか言ったりしますが、それはすなわち、商品やサービスのマーケティングにおいてソーシャルメディアで人を「動員」させること、と言ってもよいと思う。
最近のことですが例えば僕自身、自分の名前が日経に載ったり2chに載ったり、あるいは書いたブログの記事が有名人にリツイートされたりしましたが、そんな感じで直近の出来事についての一個人の意見や名前が数千人、数万人に瞬間的に届くと言うことは10年前だとあり得なかったと思う。オフラインメディアしか無い世界ではもちろんのこと、ソーシャルメディアが無かったWebの時代での拡散速度はここまで速くはなかったはずだし、多くの人と意思を疎通させ共感出来ることもなかったはず。
そういう意味でソーシャルメディアの革命は確かに動員の革命だし、Webが実現した「場所」と「時間」を超える革命に加えて、「共感」出来る世界を広げた革命と言えるかもしれない。
コミュニケーションの流れにお金を乗せて
もう1つ面白かったトピックは、4章の家入一真さんとの対談。「ソーシャルメディアのマネタイズ」と書かれているのは少し語弊があるなと思いながらも、書かれている内容はとても面白かった。
ごく普通の個人がインターネットをしながらお金を払う(自分のお金を動かす)局面って、実はそれほど多くない気がします。amazonなどのECサイトでモノを買うとき、有料のWebサービスやメルマガを利用開始するとき、インターネットバンキングでお金を振り込むとき。どれも便利なものですが、これらって実はリアルな世界でのお金の使い道とほぼ変わっていないと思います。
ソーシャルメディアやそれに伴う決済プラットフォームが広がり切ったインターネット上でのお金の動きは、これからどうなるのだろう。きっとインターネットを通して個人と個人、個人と企業、個人と有名人(?)、個人とモノ(?)が直接お金をやり取りするような世界になっていくんじゃないだろうかと僕は想像しています。
別に人はインターネットでお金を払いたくないから払っていないわけではなく、払う仕組み、使う仕組みが無いから払わないだけなんじゃないのかなぁ。今までにもWeb上では「投げ銭」と言われるような取り組みがあったりしましたが、どう見てもプラットフォーム化出来ていなかったり結局はただの銀行振込だったりするので大きな動きにはなっていませんでした。実現するには色んなハードルがありますが、例えば「いいね!」を押すだけで人に10円寄付出来る仕組みが今後出来ていく気がします。
そうなると、今までは気持ちだけがあってリアルな行動に繋がっていなかったことが、何よりも必要な「お金」と言う形でインターネット上を流れるようになっていくんじゃないだろうか。例えば応援したいと言う気持ち、感謝の気持ち、何かの制作者に対しての価値の還元。本や映像を物理的な媒体で購入する形を取る代わりに、ネット上で公開されている個人が創った文章や映像に対してお金と言う形で還元するような世界が、きっと来る気がする。クラウドファンディングやソーシャルレンディングのような仕組みは少しずつ広がっていると思うけど、それらがもっとライトになって、クリック一つで気持ちとお金を伝えられるような仕組みが出来ていくんじゃないかなぁ。
ネットでのお金の流れがもっと広く大きくなっていけば、経済も動くし格差も減っていくんじゃないだろうか。それを支えるのはきっと今のソーシャルメディアの延長上にあると思うし、それが「共感」の向こう側にあるリアルな物やお金の動きなんじゃないのかなと思います。
ソーシャルメディアは何を変えたのか。もしかしたらそれは、人々の「希望」の持ち方なのかも知れません。 - P.241 著者

動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
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