不自由な選択こそが自由になるための選択であるという矛盾

libertyと言うことで。今日はとても有意義なイベントだった。

押井守の本を読んだ。「凡人として生きるということ」。押井守の映画への取り組み方、そもそもの生き方から考えられた「オヤジになることは愉しい」「自由とはどういうことか」「ロリコンは人類によって発明された」(うわぁ)みたいなことが書かれている、「押井哲学」本。

押井守っぽいかなり極端なものの捉え方、結構共感出来ることが多かったです。

何を持って自由とするか

「自由になりたい」「自由に生きたい」と言うのは誰でも思うことだと思うのですが、もしかするとその定義は人によって大きく違うのかもしれない。「自由に生きたい」と思うのはすなわち「自由である方が、より幸せになれると思う。だから自由になりたい。」と言う意味だと思うのですが、ではどういう自由なら本当に幸せになれるのだろうか。

生きていくための水や食料、電気が確保された無人島で過ごすことになったら、それは自由と言える?(そんな環境がどうやって成立するかは置いといて。)何にも縛られることが無くなるので自由と言えば自由だと思う。でもそうしたいと思う人はあんまりいないんじゃないかと。それは恐らく、取れる行動の選択肢が少な過ぎるから。

自由とは「生き方の幅」と、とらえ直してもいいかもしれない。人間、幅がある方が自由に決まっている。 - P.48

自由とは選択肢の多さ。厳密に言うとただ選択肢が多いだけではなく「自分が好きな、興味のある世界における選択肢の多さ」だと思う。

人は選択を繰り返し、何かを(一時的には)諦めながら生きていくものだとは思う(過去記事参照)。ただ逆に、選択しなければ増えない選択肢もたくさんあるわけで。彼女を作らなければ結婚出来ないし、結婚しなければ子供も持てない。それによってその時点の選択肢が減ったり時間やお金の自由が減ったとしても、実は先々の自分が選びたい選択肢はより増えていくこともきっとあるはず。

そう考えると、何かを選択したり、他者や社会やモノと関わりを持つと言うことは何も不自由なことではなくて、積極的な選択を続けていったのならむしろ「選択の幅」が広がって、より自由になっているとも捉えられるんじゃないだろうか。

矛盾するようだけど、一時的には不自由に見えても目の前の選択肢を選んで選んで選び続けて、その先にある選択肢を「自分の選びたいものだらけにする」と言うことが、実は本当に自由になると言うことなんじゃないだろうか。

ずっと前からコミュニケーションは、いらなかった

もう一冊の本にも通じる「コミュニケーション」について。

損得勘定で動く自分を責めてはいけない。しょせん人間は、損得でしか動けないものだ。無償の友情とか、そんな幻想に振り回されてはいけない。 - P.134

押井守曰く「コミュニケーションはいらない」そうで。補足すると「形だけのコミュニケーションは」と言うことだと思う。

友達であれ彼女であれ、自分はどうして彼ら彼女らと付き合っていこうと思うのだろうか。家族であっても同じ。「一緒にいると楽しい」「話が合うから」「なんか落ち着くから」。そういうのを分解していくと、「そういう場や空気を提供してくれている」という実利(得)があって付き合っていると思える。会うたびにケンカばっかりしてそれだけなのであれば、それは損なので、きっと付き合いは薄くなっていく。

そういう利害を「友情は美しい」「恋っていいよね」的に、空気的なものでオブラートに包んでいるのが世の中の空気だと思う。ただなんとなく「友達は多い方がいい」とか「彼女もいなくて結婚出来ないやつはダメ」みたいな空気があるとすればそれは本質的ではなくて。望んでそうしているのであればそれはそれで良くて、本人にとっての損得の定義が違うだけの話。別に「友達」がいなくても死なないし不幸ではないし、一生本だけ読んで過ごす生活もそれはそれで楽しいはず。(みんなそうなると人類は絶滅するけどね。)

映画と言う表現

映画監督と言うのは一つの表現者であると。僕はあんまり映画も見ないし、そもそもこの押井守の作品も実は1つも見たことなかったりします。

でもこういう本に書かれているようなものの考え方や価値観の提起が、映画という枠の中で語られる物語を通して伝えられるものであるなら、もっと見てみようかなと思いました。まる。


エンタテイメントとしてどれほど優れていても、どこかに「なるほど」と思わせる新たな価値観や、新しい視点が盛り込まれていなければ、その映画の価値は低い。 - P.174

凡人として生きるということ (幻冬舎新書)

凡人として生きるということ (幻冬舎新書)

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