僕と自転車と、消えたサドルと、増えた鍵

いつものように行きつけのゲーセンに行ったんです。いつもの自転車で。午後10時頃、この時間なら撤去も無いからっていうのでいつも通り裏の歩道沿いに停めて店に入りました。

30分くらい遊んでから、あー今日も楽しかったー帰るかーと思って自転車を見たら…

サドルが…無い……

まさか、、意味が分からない。これ、、俺のEscape R3(緑)だよね…?なぜサドルが…?噂には聞いたことがあるけど、本当にそんなことをするやつがいるのか…?池袋は、いつからそんな修羅の町に…

そしてよく見ると、鍵が無い。いつもかけている赤いチェーンロック。なぜだ…外したのか…?外して、サドルを取って逃げた……?意味が分からない。

更に前輪を見ると……

見たことの無い鍵が、かけられて、いる……?

待て、なんだこの鍵は。


状況を整理します。

  • 自転車停めた
  • 30分経った
  • サドルが消えた
  • 自分のかけた鍵が消えた
  • 知らない鍵が増えタ

百歩譲って、サドルを取るのは分かる。鍵を壊すのも分かる。しかし、なぜ別の鍵をかける…?

ここで僕が感じていたのは、怒りではありません。どちらかと言うと、意味が分からないことによる不気味さと、恐怖です。一体誰が…何のために…?


不安を抱えながら、とにかく自転車を持って帰りたいので駅前の交番へ。

ま「すみません、自転車にイタズラされちゃって。。何か鍵がかかってて動かせないんです。」
巡「?? とりあえず奥でお話聞きましょう」

ま「かくかくしかじか」
巡「なるほど、サドルが取られて、鍵も取られて、知らない鍵がかけられてたと。それは奇妙ですね。。
ま「そうなんです。。よくあるんですか?」
巡「いえ、初めてです。と言うか自転車へのイタズラ自体、この辺りではほとんど無いんですが…。とりあえず現場に行きましょう。」


お巡りさんが鍵を壊す器具を準備していると、玄関から別のお巡りさんが。

巡2「あれ?この女性、お連れの方ですか?」
ま「(ん?何のことだ?)」

玄関を見ると、そこには見知らぬ女性が。

そしてその手には………サドルが無い、Escape R3(緑)が…!!


待て、どういうことだ?どうやって鍵を外した?と言うかなぜこの女の人が俺の自転車を持っている?

サドルを取った犯人なのか?いや、だったらなぜ交番に来た?と言うかなぜ鍵をかけた…??

女性「え、いや、これ私の自転車ですし…(おろおろ)」
ま「(いや待て、どう見ても俺のだろ。。サドルの取られっぷりとか、空気入れる所の金具も壊れてるし…確実にさっき俺が見たやつだ)」

と、思って口を開きかけた瞬間、

ま「ん?ライトが、いつもと微妙に違う…?


…まさか……。

        • -

そう、もうお分かりでしょうか。

僕の自転車は、停めた場所にあったのです。サドルの取られた自転車の、すぐ左2メートルのところに。サドルの無い自転車は僕の自転車ではなかったのです。ただ、知らないお姉さんが乗っていた、偶然すぐ隣に停めてあった、全く同型の緑色のGiant Escape R3が、サドル泥棒に合っただけだったのです。


交番で会ったお姉さんの言葉と、その時の表情を僕は忘れることは無いと思います。

お姉さん「あ、そういえば私の自転車のすぐそばに似たような自転車ありましたよ。まぁ、そっちはサドル付いてましたけどね……。


僕と自転車と、消えたサドルと、増えた鍵 〜Fin.〜